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COLD&HOT

 


「え? 歩美ちゃん、今何て?」
「だから〜、灰原さんがカゼをひいたの!!」

まだ寒風厳しい2月初旬。
いつも通り賑やかな帝丹小学校1年B組の教室。
その賑やかさ(=騒々しさ)だけを見れば、誰もがいつもと全く変わらない教室を想像したに違いない。
だが――それは外れだった。
だが外れるのも無理は無い。
この教室で『騒がしくない』たった二人のうち、一方が休んでいたのだから。
そのたった二人の浮いた存在。
元「高校生探偵」工藤新一だった『江戸川コナン』と、敵対するはずの黒の組織から来た『灰原哀』、本名・宮野志保。
これ以上無いくらい特殊な存在。

「へ〜、灰原がねえ……」
その後に心の中で「仮病じゃねえのか?」と付け加えたコナン。
「博士から休むって電話があったって、先生が言ってるの聞いたの」
と、歩美の深刻そうな声。
「今年のカゼはタチが悪いですからねぇ、こじらせないといいんですが」
歩美以上に深刻そうな光彦。
「カゼなんてひいても、うな重食えば治るんじゃねえのか」
多分、一生カゼをひかないであろう元太の台詞。
「まあ、元太君なら、一生縁が無いでしょうね。なんとかはカゼひかないって言いますし……」
「なんだと、光彦、俺がバカだとでも言いたいのか?」
「わああ、暴力はいけません〜」
「もぉ〜、ケンカしちゃ駄目よ二人とも!!」
正直な意見を言った光彦に食いかかる元太とそれを止めに入る歩美。
(おめ〜ら、いつもとおんなじだなぁ……)
それを冷めた眼で見るコナン。
「……ねえ、だから今日、放課後にお見舞いにいかない?」
「へ?」
ケンカの仲裁を終えた歩美の台詞に、一瞬間抜け面のコナン。
「おおっ、いくぞいくぞ!!」
「そうですね〜、看病するのが博士だけじゃ頼りないですし」
「ねえ、お見舞い行くんだったら、何かもって行かなきゃ」
(……やっぱそうなんのか)
ひとりうなだれるコナンの心境をよそに、お見舞い大作戦の計画を練る三人であった。

「おお〜、良く来てくれたのぅ、みんな」
「おっじゃましま〜す」
下手すりゃ特撮の秘密基地のような阿笠宅に、四人マイナス一人の賑やかの声。
(おめ〜ら、病人の家に来てるって感覚ねえな……)
コナンは頭を痛めた。
「ねえ、博士、灰原さんは大丈夫?」
「熱とかねえのか?」
「薬飲んでますか? 暖かくして寝てますか? 熱はありませんか?」
「これこれ、そう心配せんでも、大したことはないわい。2・3日休めばよくなるじゃろうて」
矢継ぎ早の質問攻めに、博士もたじたじだ。
「で、灰原はどこに?」
コナンだけ一人冷静に問い掛ける。
「おお、こっちじゃ。みんな静かにな」
「は〜い!!」
(だから、静かにっていってるだろ、おめーら)
「あ、ありがとう……みんな」
三人が両手で抱えたお見舞いの「それら」を見て、哀のお礼の微笑みは、どこか引きつっていた。
(やっぱ、止めるべきだった……)
その理由を知るコナンはまた頭を痛めた。
お見舞いの「それら」とは……
「いや〜、あの果物屋さん、親切でしたね」
「そうそう、友達の見舞いに行くっていったらよお、バナナこんなにくれたぜ」
「凄いよね、400円で50本だもんね」
(おまえら……病人にこれ全部食わせる気かよ……)
くれる方もくれる方だが、もらう方ももらう方だ。
「ねえ、灰原さん、暖かいもの食べてる?」
「え、ええ、博士がおかゆをつくってくれて……」
「お、おかゆか……なんか力でなさそうだな……」
「別に元太君が食べるわけじゃないじゃないですか」
「でも、どうせならいろいろ具が入った『ぞうすい』の方が良くない?」
「あ、いいですね、それ、体力つきますよ」
「おお、うまそうじゃん」
「ねえ、だったらみんなで作らない? 私、やりかたしってるよ」
「いいですね〜それ」
「じゃあ、早速、博士に台所借りてくるね」
「あ、僕も手伝います」
「よお、どうせならいっぱい作って、みんなで食おうぜ!!」
「あ、おい、お前等……」
三人そろって博士の所へ押しかけようとする勢いは、コナン一人で止めることは不可能だろう(永遠に)。

「……やっと静かになったな」
「ふ……」
部屋に残るのは、ベッドに上半身だけ起こしているパジャマ姿の哀と、ベッドの傍らに立つコナンの二人のみ。
「しっかしよぉ……」
傍らに置かれた椅子に座るコナン。
「何?」
「本当にカゼとはな。仮病かと思ったぜ」
「あら、病人にひどいいいがかりね」
哀は布団を被ってベッドに横たわった。
「どうせ無理したんだろ、夜遅くまで」
「薬のこと? 当たり前でしょ。誰かさんのように、元に戻ること忘れて推理に夢中になるようなことはしないわよ」
「へっ、それだけ言えりゃあ大丈夫だな。どれ、熱は……」
コナンが右手を哀の額に、左手を自分の額に置いた。
「あ……」
哀が少し体を震わせたことに、コナンは気付いたか。
「……ちょっと高いかもな」
「……」
「ん、灰原、顔赤くねえか? やっぱ熱あるんじゃ……」
「た、大したことないわよ……」
もう一度手を置こうとするコナンに、哀は消え入りそうな声で返した。
「ちゃんと体温計で測った方がいいかも……」
そう言って手を離そうとしたコナンの腕を、布団の裾から別の手が掴んだ。
「お、おい、灰原……」
「あなたの手、あったかいわね」
「お前の手が冷たいんだよ」
「もう少し、このままで……」
「え?」
今度はコナンが顔を赤くする番だった。
「同じ部屋に長く居れば、あなたにうつるかもよ、カゼ。うつすのが一番治りがはやいってね」
「……おめ〜、ほんとに化学者か?」
いつもより少し進歩した雰囲気。
でも、それはすぐに破られた。

「これ〜、君達、何をやってるんじゃ!?」
「きゃ〜、火が!!」
「げ、元太君、消火器!!」
「あ〜っと、ど、どこだ!?」
台所から賑やかを通り越した騒々しさが届いてきた。
「ったくあいつら……」
コナンの額に青筋一本。
「おめ〜ら、何してんだ!? 見舞いに来たんじゃねえのかよ」
と言う自分も騒々しく部屋のドアを荒々しく開けて出ていった。
「……」
布団を被ったままあっけにとられる哀。
(やっぱり、一人でおとなしくしてた方がいいみたい……)
ドアの向こうから騒がしい声が届く。
(でも……)
「ありがとう、みんな……工藤君も」
布団を頭まで被った哀の顔は――赤かったに違いない。

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COLD&HOT

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<あとがき>

やっぱいまいち、いまに、だ。
導入部分が長い(;_;)
メインとなる部分も、作者の経験不足がにじみでている(;_;)
こんなんで良ければ……
だめなら書きなおします(めげ)

 

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