γ線

 彼女の心が判らない。

 一体何を考えているのやら。

 どうにかして透かして見る事はできないだろうか。

 そんな事ばかり考える毎日。

 

「忘れては駄目よ」

 

 あたしは、あなたの憎むべき相手。

 憎むならあたしを憎みなさい。

 そして自分を見失わないで居て。

 君はそんな事を言いながら、何も知らない俺に口付ける。

 最近君が、判らないんだ。

 

「人の気持ちなんて、判るはずないじゃない。超能力者じゃないのよ、言わなきゃ、訊いてみなきゃ判んないわ」

 

 何も語らない君と、何も訊かない俺と。

 でも、それでもまだ諦められない俺は、みっともないだろうか。

 君の心を透かして見たい、と。

 そうしたら、君が口付ける意味も、このもどかしさの訳も、判る気がするんだ。

 名探偵に解けない謎なんて、似合わないのに。

 

 ――――じゃあ、放射線でも浴びせてみたら?透過されて見えるかも。

 ――――バーロ……。

 ――――試してみなきゃ判らないじゃない。

 ――――あほらし……めんどくせーよ。

 ――――あら、あたしの心なんてそれより簡単かもしれないわよ。

 ――――あん?言ってる事がよく判んねぇんだけど。

 ――――簡単なのよ、とても。

 

 やっぱり君は謎だらけ。

 試してみなきゃ判らない。

 そう、簡単な事だ。

 だけど、そうさ俺は何も知らない。

 そして俺はまた、何も判らないふりで、秘密を纏った君に口付けるのだ。

BACK