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意識という深い海

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 ねぇ、どうしてこんなにも身動きが取れないの。


 どうして色んなものがあたしを縛るの。


 あたしは自由でいたいのに。




















 風が心地いいほどに、そこにある空洞の存在を思い知らされる。

 あたしの胸を吹き抜ける、冷たい風。

 どうしようもないことをどうしようもなく悲しいと思う。

 そんな気分にさせるから、家の外は嫌い。

 空や雲、緑や風、雨も太陽も全部嫌い。

 あたしもそれの一部であるかもしれないなんて、

 そんなこと、間違っても感じちゃいけないの。

 そんな期待は、虚しいだけ。










 家の中は安全だった。

 家の中では、あたしは確かにあたしでいられたし、

 胸にあいた穴を吹き抜ける風もない。

 だけど、どうしてかしら。

 思考回路に霧がかかる。

「最初に扉を開けたのは、誰?」

 あたしを外に連れ出した。

 外は嫌。

 何もかも、思い知らされてしまう。

 あたしの縛られた手。

 あたしの縛られた足。

 あたしの繋がれた首。

 あたしはちっとも自由なんかじゃないって。










 人は人に囚われている。

 それがあたしたちなら、仕方のないこと。

 それが当然のこと。

 だけど、風に吹かれると、思い出してしまう。

 あたしは今のままじゃ、嫌。

 縛らないで。

 解き放たれたい。

 自由になりたいの。

 あたしを自由にして。

 空も雲も緑も風も雨も太陽も。

 あたしを追い詰めるだけ追い詰めて、

 誤魔化せないところまで追いやって、

 結局誰も、誰もあたしを助けてはくれない。










 あたしはずっと泳いでる。

 泳いで、泳ぎ続けて、もうどれくらい経ったのだろう。

 行き着くところは何処なのだろう。

 何処まで行けば、自由になれる?

 あたしを縛るものは言葉か。人か。自分自身か。

 眼に映るものさえ、信じてはいけないと言う。

 あたしはずっと泳いでいるの。

 意識という深い海の底を。

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