粉雪


 粉雪は形を留めない。

 ぼたん雪は積もらない。

 心の溶かし方なんて知らない。

 今も昔も。



 でたらめな言葉にでたらめな音をつけた。

 でたらめに流れ込んでくる思い出。

 自分が思い出しているわけではない。

 けれど、これは確かに僕の思い出。

 僕とあいつの。

 あいつが、思い出しているのだ。

 白い静寂にはそぐわない、ざわついた心。

 それをまだ覚えている。

 今でも残っている。

 心の底の方に根ざす、あたたかい感情。

 そんなものを見せられると、意地でも折れたくなくなる。

 騙されたのは僕の方だ。

 あれは一時の気の迷い、勘違いから生まれたものだと。

 思わせておいて、卑怯者。



 ちらつくぼたん雪。

 お前が立っている窓。

 僕はもう、おまえを守ることはないだろう。

 この雪は積もらない。

 おまえの答えになんか、乗ってやらないよ。

 思いながら、笑っていた。

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