one silent
afternoon
ーある静かな午後ー
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「は・・・・・・?」 コナンがびっくりした様に答える。 「はっ?とは何よ、は?とは・・・・・。明日、家にこない?っていっただけじゃない・・・・なんでそんなに驚くの?」 哀がそう言っていてもコナンはぽかんとしている。 「い・・・いや、お前からそんな風に言ってくるのって珍しいなって思ってさ・・・・」 哀は少し赤くなってしまったが、それを隠すように言葉を続けた。 「で、来るの?来ないの?どっち?」 「あ、行くよ・・・。明日は暇だしな・・・・・。」 コナンはほんとはとても照れくさかったのだが・・・・・。 (あらたまって灰原の家に行くのなんて・・・・しかもアイツが誘ってくれるなんて・・・・初めてじゃないか・・・?) とかなんとか考えてるうちに、哀は、「じゃあ、明日。」と言って去っていく。 その後姿をみつめながら、 (明日・・・・何着ていこう?) と考えているコナンがいた。 ・ ・ ・ 翌日。 ピンポーン・・・・・。 チャイムがなって・・・・哀が中から出てくる。 「あ、来たのね・・・・。あがって・・・・。」 「お、おう・・・・。」 家の中に入ると、哀はスタスタと台所に入っていき、コーヒーをいれる。 いつもここには来ているはずなのに・・・・なにかどきどきする。 「そういえば博士は?今日はいねえのか?」 「ええ・・・・。今日はちょっとね・・・。」 (マジかよ・・・・・。) コナンの鼓動はなおさら大きくなる。 この家に二人きり・・・・・・・・。そう考えると・・・・・。 「はい、コーヒー。」 どきっ!! 「お、おおおおおおう!!」 「なに?どうしたのよ?」 哀が不思議そうにコナンをながめ、近づいてくる。 「熱でもあるんじゃないの?」と、くすくす笑う哀。 (う、うわっ、近づくな・・・・。し、心臓が・・・) 哀は、そんなコナンをみつめながら、コーヒーをすする。 「で、なんなんだよ?何か用があったんじゃねーのか?今日俺を呼んだってことは・・・・。」 「いえ、特には用はないけど・・・・。」 (な、何だよそれ・・・・。) 少し拍子抜けしたコナンだったが、次の哀の一言に黙りこくってしまった。 「何か・・・用がなくちゃいけない?用がなければ・・・あなたを家に呼んじゃ・・・いけない?」 急に哀は悲しげな瞳をして、うつむいてしまった。 コナンは何も言えなくなってしまった。 しばらく、家に沈黙がながれ、重苦しい空気がただよっていたが・・・・・ コナンがその沈黙をやぶった。 「いや、別にいいさ。用がなくても・・・・。呼んでくれてうれしいよ。」 哀の顔が、ゆっくりとあがってゆく。 「ほ、本当?」 「ああ、本当だよ。」 (ただ・・・どきどきするけどな・・・好きな奴と一緒に・・・2人きりだと・・) 哀はそんなコナンの想いに気づくはずもなく・・・・。 「じゃあ、また今度呼んであげるわ。」 と、優しく微笑んだ。 その時だった。急に風が吹き荒れたらしく、窓ががたがたゆれはじめた。 それがやんだとき、静かに白い怪盗が窓ぎわに降り立った。 「か・・・怪盗キッド!?」 コナンが驚いたのは言うまでもないが・・・・・。 哀はあきれた顔をして、いつものことのように怪盗を見ている。 「あら、怪盗さん・・・・。まだ午後2時・・・。あなたのお仕事時間じゃないんじゃないの?」 「いいんです・・・・。あなたに会いに来たんですから・・・。」 と、当然のようにやりとりする2人。コナンはただ驚くばかり。 「2人とも・・・知り合いなのか・・・・?」 「いえ、べつに・・・・この怪盗さんがしつこくあたしに会いにくるだけ・・・・。」 「しつこくとは・・・・そんなつもりじゃないんですがね・・。」 と、苦笑するキッド。だが、コナンとしてはすぐに捕まえたい相手のはずなのだが、今はそんなことどうでもいい。 「お、お前・・・・灰原とどんな関係なんだ?」 「どんなって・・・・そりゃあ・・・」 「何の関係もないわよ!!!」 キッドの言葉を、哀がさえぎる。 「あ、もしかしてこの人が・・・・あなたの想い人・・・なのですか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 哀は、真っ赤になっていた。 「え?・・・なに?お前もしかして・・・・・」 「そうよ・・・・。あたしは工藤君が好き・・・・。悪い?」 素直にいえたはずなのに、なんだか喧嘩ごしになってしまう。 「ふ・・・・ここは私が身をひきましょう・・・・。では・・・・また会える日を楽しみに・・・・。」 キッドが静かに去っていく。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「こんな形であたしの気持ちがばれるなんてね・・・・・。ばかみたいね。あたし・・・」 「お、おい・・・・・。」 「あなたの好きな人は、ほかにいるのにね・・・。」 「は・・・・はあ????」 「ごめんね・・・。もう、忘れて・・・。」 「わ、忘れられるわけねーだろ!俺だってお前のこと好きなんだからよ・・・。」 真っ赤になってコナンが照れくさそうに言う。 「え・・・・・・?」 哀も同じく真っ赤だ。 とっても静かな午後・・・・・・・。 哀にもコナンにも、とても心地よい時間がながれていた。 |