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走っていた。
祭の灯を背にして、青暗い畦道をただひたすらに走っていた。
まるで何かから逃げるかのように。
でも、何からなのかが判らない。
突然、分かれ道に出て立ち止まる。
真っ直ぐ行くか、脇に逸れるか。
いつから居たのだろう、赤い着物を着た少女が、すっと脇の道を指差した。
逃げる者は道と少女を交互に見る。
少女は逃げる者の眼を捕らえて離さない。
青い闇。
祭の喧騒。
分かれ道に腰を据えた祠。
少女。
月。
少し狼狽えた表情をした後、彼は少女が指差した道を行った。
先と同じく、ひた走る。
似たような道と、似たような景色。
何が違うのか。
何から逃げるのか。
どこへ行くのか。
何も、何も判らぬままに、切れる息も構わずに、ただ走る。
この道の先に、何かがあるはずと思いながら。
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