** シェリーの記憶 **

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―ったく、勝手にしろ……!―

「あれ?いつ聞いたかしらね…?ジンのこんな子供っぽい声…」

灰原の組織の記憶でおぼえているのはこんなもの。
たとえ楽しいことがあってもすぐに別のことで一杯になり、忘れてしまう。

「確かにどこかで聞いたはずなんだけど…」

灰原は必至に記憶の糸を探る。もう喉くらいまで出てこようとしているのに、その言葉の記憶が出てこない。

「……!けほっこほっ!」

…むせた。だが、不幸中の幸い。この咳が原因で、先ほどの言葉の記憶が蘇った。

「ああ…そうだったわ。確かあれは………私がAPTX4869を
作らされてすぐのこと……」








コツコツコツコツコツ……

廊下から、足音が聞こえる。単調で、少し乱暴な足音が。

「この足音は……ジンね」

「よう、シェリー。研究ははかどってるか?」

「邪魔さえ入らなければ、すぐ出来るわよ」

「ふーん。その割りにはやけに遅いじゃねぇか?」

「あなたのせいでしょ?毎日毎日邪魔ばっかり…ふう」

「俺のせい?…じゃあおとなしくしてりゃぁ良いんだな?」

ジンはそう言うと、ソファに見をうずめ深い眠りに入っていった。
暫くして…

「ん?ああ…眠っちまったのか…」

一応目が覚めた。目の前にいたはずのシェリーの姿が無い。

「シェリー?……ったく、どこに行った……………って、おい。何してる?」

さすが暗殺などを専門にしている。すぐにシェリーが後ろにいると分かったようだ。
だが、シェリーが後ろにいるだけの感覚では無い。
髪が引っ張られるような状態だ。

「おい、質問に答えろ」

「何って…みつあみ編んでんの」

「ほう……では何故俺の髪で編む?自分の髪で編め」

「だって私、ショートヘアでしょ?でも、ジンは長髪じゃない。
それに邪魔でしょ?」

確かに前々から、少し邪魔になっているかなとは思っていた。
しかし、ならば何故切らずに三つ編みにする?
そんな疑問が残ったので聞いてみた。

「おい、邪魔たと思っていたというなら、普通は切るんじゃないのか?…編まずに」

「この部屋にハサミがあるわけ無いでしょ?しょうがないから三つ編みにして
まとめてんの。それに、“おとなしくする”って言ったのは、どこの誰だったかしら?」

…………簡単にねじ伏せられてしまった……

「……ったく、勝手にしろ……!」

ジンは少し不機嫌そうに呟き、そのまま30分ほどその状態にさせられた。
もちろんこの後、組織の団員ほぼ全員に笑われたことは言うまでも無い。
もちろんあの弟分のウォッカにも。





*作者から一言*
はじめての投稿です。
歴代TOP11番絵を小説にしてみました。
2人の性格がかなり違がうような感じがします。
これからもよろしくお願いします。
―灰原藍より―

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