オレの名前は工藤新一。まっ今は江戸川コナンだけどな。
オレ、蘭、灰原、博士は今とある旅館に泊まりに来てる。
なんでも博士がインターネットの懸賞でこの旅行を当てたんだと。
んでオレ達が今、遊びに来てるのは京都。
オレ達は京都で観光やらを楽しむはずだった・・・。
幸せの場所
第一章 会話
コナン達は今、京都の旅館にいる。
今日の予定も終わって、今はゆっくりお風呂にでも入る時間。
「やっぱり京都はいいところじゃのぉ」
この博士の言葉に哀はこう答えた。
「そうね・・・色々な歴史的文化財があって、さすが歴史の都って感じよね」
「それより博士ってホントよく懸賞当てるよなぁ」
コナンがこう言うと、博士は笑ってこう答えた。
「運が良いんじゃよ。わしは」
そう笑って言う博士に、コナンと哀は同じような表情を浮かべ呆れ気味。
そこへ蘭がやって来た。
「ねー、一緒にお風呂入ろ!」
「「へ???」」
こんなコナンと博士を見て、蘭はこう付け足した。
「哀ちゃん!」
哀はコクンと頷き、コナンにクスッと笑って見せて蘭に手を繋がれ行ってしまった。
第二章 哀の気持ち
ちゃぷん・・・
温泉には蘭と哀の2人だけ。
2人っきりの分、余計、水音が温泉内に響いている。
すると蘭がいきなり哀にこう聞いた。
「哀ちゃんは・・・好きな人とかいないの?」
(何を言い出すの・・・この子は・・・)
哀はあの時のコナンと同じ感想を持った。
「別に・・・」
「そっか・・・でもね・・・私、コナン君は哀ちゃんの事、好きなんじゃないかなーって思うんだ」
(え・・・?彼が私のこと・・・?そんな訳無いわ・・・)
「そんな事無いと思うわ・・・だって江戸川君が好きなのは・・・」
「好きなのは?」
蘭が聞き返してくる。
「好きなのは・・・」
「好きなのは・・・」
「あ・・・なた」
「え???」
そして哀は啖呵を切ったように蘭にこう言った。
「江戸川君は蘭さん、あなたの事が好きなのよ」
「まっさかぁ!私とコナン君じゃ年が違いすぎるよ!」
蘭は無邪気に笑ってこう言った。
(そう。その年の差を作り、彼にあなたへの想いをすぐに伝えられないようにしてしまったのが紛れもない、この私・・・)
その瞬間、哀は自分の頬に何かが流れるのを感じた。
「あ、哀ちゃん!?どうしたの!?」
哀は心配する蘭に、ただ首を振るだけだった。
第三章 心からの心配
数分後・・・コナン達のもとに現れたのは蘭だけだった。
「あれ???蘭姉ちゃんだけ???灰原は?」
そのコナンの質問に蘭の顔が悲しい表情になった。
(え・・?)
コナンはこんな蘭の表情に不安を抱いた。
「哀ちゃんね・・・いきなり泣き出しちゃって・・・1人にしてって外に飛び出して行っちゃった」
「どうして哀君は泣いたりしたのかのぉ?めったに涙を見せない子じゃのに・・・」
博士は心配そうにこう言った。
「・・・すぐに泣きやんで、戻ってくるよ」
哀の事を心から心配していたが、蘭を心配させないためにコナンはこう言った。
「うん、そだね・・・」
蘭は元気がまったく無かった。
(私の・・・せいかな・・・?)
第四章 コナンの心配
しばらくしてコナンのDBバッチがなった。
(ったく・・・灰原のヤツ、迷子にでもなったんじゃ・・・まっ良かったかな?)
コナンはこんな事を考えながら、バッチを手に取り、バッチに向かってこう言った。
「灰原?たっく迷子か?今、何処にいるんだよ?」
しかしバッチから聞こえたのは、哀の声ではなく、低い聞き覚えの無い声だった。
コナンはその場から離れ、廊下にでた。
一哀の身の危機を感じたから一
一蘭を心配させないため一
一博士を心配させないため一
一2人を危険にそらせないため一
第五章 灰原哀 誘拐事件
「オメー誰だよ?何で灰原のバッチで・・・」
コナンの中にいやな予感が駆けめぐる。
一灰原の身に何かあったのか!?一
『へーこの子、灰原っていうんだ・・・かわいい子だな・・・』
バッチの向こうの男は、いかにもバカにするようにコナンにこう言った。
「んなことどーでもいい!なんでオメーが灰原のバッチに・・・」
『そーだったな。驚くなよ。オレ、この子を誘拐したぜ?』
「なに!?」
コナンがこう言った後、その男が哀にバッチを渡したのかその男がその場を離れたのか、バッチの向こうの声は哀に変わった。
『・・・工藤君?』
「灰原か!?オメーどうしたんだ!?さっきのヤツは!?」
『彼なら席を外したわ・・・どうしたのかは・・・
外で1人でいたらいきなり・・・あの人が・・・』
「オメーを連れて行ったんだな?」
『そう言うことになるかしら・・・』
「オメー、今どこにいるんだ?分からねーんならその場所の手がかりでも何でもいい!!!それだけ教えてくれたら、オレが助けに行ってやっからよ!」
コナンのこの言葉に戸惑いながらも、哀は手がかりを探しているようだ。
しばらくして再び哀の声が耳に入った。
『え・・・煙突が2本・・・斜めに並んでいるわ・・・』
「煙突?」
『ええ、古びた煙突・・・えーと、よく見えないけど・・・煙突に伝・・・て書いてあるのが見えるわ・・・はっきり見えるのは 伝だけね・・・』
哀がそう言った後、またあの男の声がした。
そして哀にこう言った。
「お嬢ちゃん?お友達との会話は楽しめた?」
男のこの質問に哀はこう答えているようだ。
「ええ、結構、楽しめたわよ?」
この哀の声を最後に彼女との通信は途絶えてしまった。
一煙突が2本・・・
(DBバッチで灰原と通信できたって事は・・・アイツが監禁されているのは・・・ここ、旅館から半径20キロメートル以内って事・・・)
(くそっこんな時に追跡眼鏡があれば・・・今すぐにでも灰原の居場所が・・・灰原を助けに行くことができるのに・・・)
一そう、追跡眼鏡は間の悪いことに故障中。
そして、今掛けている眼鏡はただの眼鏡。
なんの役にも立たないのだ。一
しかし何もしなければはじまらない。
コナンはまず、旅館の人にこの辺に2本煙突が立っているところを知っているか聞き込みすることにした。
何人かに聞き込みするが、誰もそんな物、知らないと言う。
そして暫くして、自分の耳を疑うような情報が入ってきた。
その情報をコナンに提供してくれたのは旅館の仲居だった。
彼女はこう教えてくれた。
「古びた煙突が2本あるところ?この辺じゃ見かけないわねぇ・・・。あっそう言えば関係ないかもしれないんだけど・・・」
「え!?何かあるの?何でも良いから教えて!!!」
「あのね、2本は無いんだけど、煙突が3本ある場所があるわよ・・・」
コナンは大きな声でこう聞いた。
「それって何処!?地名は!?」
仲居はコナンの大声に少し驚きながらもこう答えた。
「えっえーと、確か・・・地名は、羽束師・・・だったかしら?でもそれがどうしたの?ボウヤ?」
「ううん!ありがとう、お姉さん!」
コナンは不敵な笑みを浮かべ、廊下を駆けていった。
第六章 蘭の心配
(そうか、そうだったんだ!本当の煙突の本数は3本だったんだ!その煙突は上から見ると丁度、煙突の並び方が、正三角形になるように並んでいたに違いない!あの仲居さんも煙突が2本の場所なんて知らないって言ってたからな!灰原が煙突が2本に見えた訳・・・それは1本の煙突が正面の煙突と丁度直線上にあり、重なって見えなかったんだ!)
そしてコナンは羽束師に向かおうとした。
すると蘭が外の方から走ってきた。
蘭はひどく息が切れた様子だ。
そして途切れ途切れながらも、コナンにこう聞いた。
「あ・・・ハァ、コ、コナン君・・・何処行ってたの?」
「ら、蘭姉ちゃんこそ何処行ってたの?そんな息切らして・・・」
すると蘭の顔がまたもや、悲しそうになった。
「あ、哀ちゃん、まだ帰ってきてないでしょ?だから・・・」
蘭が黙り込んでしまった。
その代わりにコナンが蘭の言葉の続きをいってあげた。
「探してたんだね?灰原を」
このコナンの言葉に、蘭はコクンと深くうなずいた。
そしてコナンは蘭にこう言った。
「灰原のことなら大丈夫だよ!だって今、この博士が作ってくれたこののバッジに、灰原から通信があったんだよ!通信の内容は迷子になったから迎えに来てだってさ!」
と自分の胸についているバッジをコツコツ人差し指の先で叩きながら、コナンは元気にこう言った。
そしてこう続けた。
「だからボク今からアイツを迎えに行くから、蘭姉ちゃんはここで待っててよ!1人が待ってなきゃ、博士が心配するでしょ?ねっ!ボク、すぐ灰原と一緒に帰ってくるからさ!」
それまで何気に暗かった蘭は、にっこり笑って大きくコナンにうなずいて見せた。
そんな蘭の様子にほっとするコナンだった。
蘭に大きく手を振って、コナンは旅館をで、すぐさま羽束師へ向かった。
第七章 互いの姿
コナンは旅館から約5キロはあろう道を、
一度も休まずに、走り続けた。
(灰原、待ってろ!今、助けてやっからな!)
こう思いながら、全速力で走っていると、ようやく煙突が3本立っているところにたどり着いた。
煙突には伝統工業と文字が打ってある。
するといきなりコナンの耳に銃声音が入ってきた。
「銃声!?ま、まさか灰原身に何かあったんじゃ・・・!?」
コナンは体全体に力が入るのを感じた。
それより先に哀の監禁所を見つけなければ、哀の様子を確かめることもできない。
その時、ふとコナンの脳裏に哀の言葉が過ぎった。
『正面の煙突に伝・・・て書いてあるのが見えるわ・・・はっきり見えるのは、伝 だけね・・・』
(3本の煙突が2本に見え、なおかつ正面の煙突に書いてある文字が伝統工業の“伝”としかはっきり見えない場所・・・そのことをふまえて監禁所を探せば、見つかるはず・・・!)
コナンがその辺りに行き、辺りを見回していたその時、また先ほどと同じ、銃声が響いた。
今度はコナンのすぐ近くで銃声が響いた。
コナンはその近くで、古びた倉庫を見つけ、もしやと思い中に入ってみた。
すると今度はその倉庫内に三度大きな銃声が響いた。
「灰原ァ!!!!!」
コナンは大声を出し、哀を探した。
倉庫は意外に狭く、哀を探し出すのは簡単だった。
「灰原!!!」
哀が誘拐されてから約3時間・・・やっとコナンと哀の目にお互いの姿が映った。
第八章 哀の負傷
一コナンの目にはぐったりした哀の姿が映った。
一哀の目には真剣なコナンの姿が映った。
「は、灰原!!!」
コナンは哀の正面に拳銃を持っている男など気にせず、哀の元へ駆け寄った。
そして、そっと彼女の体を自分で支えた。
「灰原!!!灰原!!!」
必死で自分を呼びかけるコナンに哀は笑ってこう言った。
「く・・・工藤君・・・来・・・て・・・くれた・・・の・・・」
すると哀はふっと気を失ってしまった。
「灰原!?」
「灰原ーーー!!!?」
彼女を支えていた、自分の手を見ると、血まみれだ。
そしてコナンはその手で、哀の手をぎゅっと握りしめた。
そしてキッと自分の目の前の男を睨みつけ、こう言った。
「オメー自分が・・・何やったか・・・わかってんのか!?」
そんなコナンを明らかにバカにするように男はこう言った。
「わかってるよ?オレ、バカじゃねーし」
コナンは内心でこう考えていた。
(コイツを早く、この時計型麻酔銃で眠らせ、警察に連絡し何よりも早く、灰原を病院に連れていかねーと!!!)
その男が、銃口をコナンに向けた。
それと同時にコナンが麻酔銃を男に向けた。
男はそんな物で何ができるという表情を浮かべた。
「そんな時計でなにができるって言うんだ?やれる物ならやってみろよ!!!」
「ああ、やってやるよ!オレを甘く見るなよ!!!」
コナンはそう言い放ち、言葉と一緒に麻酔銃を男に向かい撃った。
すると男は即座に床に崩れ落ち、そのまま眠ってしまった。
第九章 それぞれの思い
そして、すぐにコナンはイヤリング型携帯電話を手に取り、警察に連絡した。
その時に、救急車も同時に頼んだ。
そして数分後、警察と救急はコナン達の元に現れた。
哀は救急車で病院に運ばれた。
コナンも警察に事情を話し、事情聴取は後に回して貰い、哀と一緒に救急車に乗り込んだ。
哀は激しく、息を漏らしている。
(灰原・・・)
コナンはぎゅっと強く、再び哀の手を握りしめた。
そしてコナンの耳に救急隊員の無線の会話が耳に入ってきた。
「はい、患者の名は灰原哀、年齢は7歳。拳銃で左側腹部を撃たれた模様。
弾は貫通していますが、出血が多く腎損傷の危険あり・・・」
(左・・・側腹部・・・・・・か・・・。あの時・・・オレが撃たれたところと同じだな・・・・・・。灰原、オレにはこんなことしか言えねーけど・・・がんばれ・・・。それと絶対死ぬんじゃねぇぞ・・・)
しばらくして、病院に着いた。
哀はすぐに、手術することになり手術室へと運ばれた。
そして、コナンはこのことを蘭、博士に連絡するこために、公衆電話の受話器を手に取り、蘭の携帯の番号へ指を走らせた。
プルルルル・・・
ガチャ
『もしもし・・・』
「あ、蘭姉ちゃん?ボク、コナンだけど・・・」
『あ?コナン君?哀ちゃんは?』
「あ、その事は後で話すから、今すぐ博士と羽束病院に来てくれない?」
すると蘭の声は急に重くなった。
『哀ちゃんに・・・何か・・・あったの・・・?』
そんな悲しそうな蘭にコナンは気が重くなった。
「とりあえず・・・来て・・・」
コナンはただ、ただ、来てと言い続けた・・・。
『うん・・・分かったよ・・・すぐ行くね・・・』
蘭は返事をしたが、彼女の辛そうな表情がコナンは想像できた。
(蘭・・・灰原が撃たれたのは自分のせいだと思ってるのか・・・)
(哀ちゃん・・・ゴメンね・・・ホントにゴメンね・・・)
蘭、コナンのお互いの気持ちはどちらとも、別人に向けた物だった。
第十章 蘭の涙
それから約2時間後。
蘭、博士の2人はコナンと哀の待つ羽束病院に到着した。
「コナン君!!!」
蘭がこう言ってコナンのもとに駆け寄ってくる。
そして息を切らせながらこう言った。
「コ、コナン君・・・お、教えて?哀ちゃんは・・・」
とぎれとぎれにそう言う蘭の瞳には、涙が溢れている。
コナンはそんな蘭に真実を言うのをためらったが、蘭の瞳からボロボロこぼれ落ちる涙と蘭の涙声ながらの「教えてよ・・・」という言葉にこれ以上隠しきれなくなり、蘭に真実を伝えた。
一それに蘭に真実ではなく、虚偽を教えるのが自分には辛すぎたから一
そしてコナンは口を開いた。
「あ、あのさ・・・灰原は・・・誘拐されて・・・それで・・・」
「それで・・・なんなの・・・?」
「それで・・・その犯人に・・・拳銃で・・・撃たれた・・・」
コナンがこう言うと、蘭の表情が先ほどよりもっと重くなった。
そしてかすれがすれの涙声で自分を責めた。
「わ・・・私のせいだよ・・・。私の・・・・・・。私があの時、お風呂で哀ちゃんが泣くようなこと言わないで、それで哀ちゃんが外に行くの止めてたら哀ちゃんは・・・誘拐もされなかったし・・・撃たれたりなんかしなかったよ・・・。哀ちゃんが苦しい思いをしたのは全部、私の・・・」
コナンは悲しそうな蘭に、なにも言ってやれなかった。
蘭は「1人にして」と言い残し、コナンと博士の前を去って行った。
第十一章 静寂という言葉
「それで新一君・・・哀君は・・・」
いきなり声を掛けてきた博士に、コナンは少し遅れてこう答えた。
「アイツが撃たれたのは、左側腹部・・・弾は貫通しているが、出血が多く賢損傷のおそれがあり、かなり危険な状態らしいぜ・・・それで今は手術中。助かるかどうかは分からねー」
コナンは壁を拳で叩いた。
そしてそれ以来2人は長い時間、言葉を交わさなかった。
沈黙が続くこと約2時間、次はコナンが口を開いた。
「なぁ・・・博士・・・」
「ん?なんじゃ・・・新一」
博士はすぐさま返事をした。
そしてコナンは続けた。
「アイツ・・・灰原は・・・何で泣いたんだと思う?」
「・・・なんでじゃろうな?わしには分からんよ。君にも分からないんじゃからな」
博士にこう言われ、コナンは黙り込んだ。
(灰原・・・前より少しは明るくなったと思ってたけど・・・やっぱりまだ・・・悩みを抱えてたんだな・・・守ってやる・・・とか言いながら・・・オレは・・・アイツの悩みを・・・分かってやることができなかった・・・)
それ以来2人はずっと黙ったままだった。
蘭も2人のもとにはまだ帰ってこない・・・。
夜の病院は静寂という言葉がピッタリだった・・・。
第十二章 2つの苦しみからの解放、消えない1つの苦しみ
それから約数時間後、手術室の手術中という明かりが消え、中から出頭医数人と看護師に運ばれ、タンカに乗った哀が出てきた。
そこには蘭が哀が乗せられた、タンカの隣でそれに合わせ走っている。
蘭のまぶたは、今までずっと泣いていたのだろうか、真っ赤だった。
「哀ちゃんは大丈夫なんですか!?」
蘭の震える声が聞こえてくる。
そして「もう大丈夫です。出血は止まりましたし、傷口はふさぎました。もう元気になりますよ」
医者のこの言葉に次は、喜びで蘭は涙を流した。
「よかった・・・よかった・・・」
コナンと博士も、とてもホッとした。
コナンは同時に3つある内の2つの苦しみから、解放された。
解放された苦しみは・・・
一その1つは哀が無事だったこと一
一もう1つは蘭に笑顔が戻ったこと一
そして消えない苦しみとは一一一
一哀の悩みを分かったやれなかったこと一
第十三章 彼女達の幸せそうな笑み
その緊迫した昨日から一夜明けた、今朝。
哀の病室には哀とコナンと蘭と博士の4人。
哀はまだすーすーと眠っていて、あとの3人はずっと哀を見守っている。
すると哀の瞳がうっすら開いた。
「・・・?」
「あ、哀ちゃん!!!」
「灰原!!!」
「哀君!!!」
「蘭さん・・・江戸川君・・・博士・・・?」
「よ、よかった・・・よかった・・・哀ちゃん・・・本当によかった・・・それと・・・ゴメンね・・・」
蘭はまた泣き出してしまった。
大粒の涙がボロボロこぼれる。
「え・・・?どうして・・・?あなたは別に・・・何も・・・」
哀は驚きながらも、ゆっくり話す。
「ううん・・・私があの時、哀ちゃんを泣かせなければ・・・哀ちゃん本当に・・・ゴメンね・・・」
「あなたは別に悪いことをしていないわ・・・私はあなたのせいで泣いたんじゃないもの前にすごく悲しいことがあってそれで・・・思い出し泣き・・・」
哀はそう言ってフッと蘭に笑って見せた。
すると蘭も哀にフッと笑って見せた。
「哀ちゃん、悲しいことがあったら・・・言ってね・・・こんな私でも・・・力になれたら、力になるから・・・」
そして蘭の口元から、久しぶりに幸せそうな笑みがこぼれた。
そしてそんな蘭を見つめながら哀が小さく「ありがと・・・」
と言いながら、恥ずかしそうに笑みをこぼした。
そんな蘭と哀を見てコナン、博士の口元にも自然と笑みがこぼれた。
第十四章 幸せな毎日
それから3日後、哀は京都の羽束病院から東京の米花総合病院に移った。
そして毎日、歩美、元太、光彦が来るようになった。
時間がある日は時々、蘭も博士も来てくれる。
コナンも毎日、来てくれる。
哀はとても嬉しい気持ちがした。
一みんなが自分のことを心配してくれる一
一組織にいたころはそんなことは絶対無かった一
一自分を心配してくれる人がいるってなんて嬉しいんだろう一一なんて幸せなんだろう一
哀はそんな感情でいっぱいだった。
そんな時、元気な声が哀の病室中に響いた。
「哀ちゃん!元気?」
「灰原さん!元気ですか?」
「灰原!元気してっかぁ?」
少年探偵団の3人の声だ。
その後にコナンの声がした。
「おー灰原、大丈夫か?」
一哀はとっても幸せな気持ちになった一
「哀ちゃん、大丈夫?とっても心配したよぉ!でも元気になってよかったぁ!
学校のみんなも心配してたんだよ!哀ちゃんが元気になったって聞いてみんなも安心したって喜んでたよ!」
歩美は弾むようにこう言った。
一学校のみんなも私のことを一
「ありがとう、みんな・・・」
哀は4人を見て、微笑んでこう言った。
その哀の言葉に4人は照れながら、1人1人
「うん!」
「当たり前ですよ!」
「おう!」
と答えた。コナンは何故か何も言わなかった。
それはたぶん哀のその嬉しそうな、幸せそうなその表情に見とれて、その自分を知られるのが恥ずかしくて黙っていたのだろう。
それから哀は4人と色々な事を話した。
学校のみんなはどうしてるか。
この頃はやっている事。
テレビの話。
それを見れば誰もが微笑ましい、幸せな子供達に見える。
一その中に、辛い現実を背負って生きている少女がいるとは誰も考えもつかないだろう一
第十五章 彼女のあの表情
「いってきまーす!!!」
「あ、コナン君!哀ちゃんのお見舞いに行くの?」
事務所を出ようとするコナンに蘭が声を掛ける。
「うん、そうだよ」
「じゃあコナン君、これ哀ちゃんに渡してくれないかな?私、今日、ちょっと用事があって哀ちゃんのお見舞いいけないんだ」
そう言って蘭がコナンの小さな手の上に、かわいらしいラッピングがしてある赤い包みと、小さな封筒を乗せた。
「ん?何なの?コレ?」
コナンは気になってそれの正体を聞いた。
「ヒ・ミ・ツ!哀ちゃんに渡してくれたときに、そのラッピングの方は見ていいよ!でも、こっちの手紙は見ちゃダメよ!」
「う、うん!」
コナンは元気よく返事をした。
「じゃあ、よろしくね!コナン君、いってらっしゃい!」
そんな蘭にコナンは大きく手を振って
「いってきまーす!!!」
と答えた。
いつもなら歩美達と一緒に哀の見舞いに行くのだが、今日はコナン1人。
それには大きな訳があった。
一アイツの悩んでいることを、苦しみを全てとはいえないが・・・少しでも取り除いてやりたい一
コナンはそう考えながら、哀が入院する米花総合病院に向かった。
そしてコナンは哀の病室のドアをノックした。
「どうぞ・・・」
という哀の声が聞こえてくる。
コナンは病室に入った。
「あら、工藤君1人?珍しいわね・・・」
「ああ、ちょっとオメーに話があってな」
哀は瞳をくるくるさせて
「話?」
と聞き返す。するとコナンが
「あ、その前にコレ、蘭がオメーにって・・・」
そう言って哀に蘭から預かった物を差し出した。
「え?彼女から?」
哀はまた瞳をくるくるさせて、コナンからそれを受け取る。
哀はまず、手紙の封を切った。
中にはこう書いてあった。
『哀ちゃんへ
このごろお見舞いに行けなくてゴメンね。
でも、コナン君や、歩美ちゃん、元太君、光彦君から
哀ちゃんが元気になったって聞いて、とても嬉しいし
良かったと思います!
あ、前の話になっちゃうけど哀ちゃん、悩みや辛いことがあったら
気にせず言ってね!私もその方がとっても嬉しいです!
なんか、かわいい妹ができたみたいで・・・。
それと今度、私がお見舞いに行ったときには色々お話しようね!
あ、それと私からのプレゼント開けた?
中身はお楽しみ。
喜んでくれたら嬉しいな!
じゃあね!』
「・・・・・・」
哀は言葉を口に出さなかったが、とても嬉しそうな表情をしていた。
哀の嬉しそうな表情は彼女がここ(病院)に入院してから3回ほど見た。
コナンは哀のその表情を見るだけで、幸せな気持ちになるのだった。
そして蘭が用意した赤いかわいらしいラッピングがされた包み・・・。
その中身は蘭のお手製と見られる、クッキーだった。
その形はクマ、ハート、ホシと様々だった。
哀はそのクッキーを割れないように、優しく自分の机の上に置いた。
第十六章 もう一つの悲しみからの解放
「なー灰原・・・」
コナンがいきなり自分を呼んだので、哀は少し遅れて返事をした。
「なに?工藤君?」
「あのさーオメー、あの時・・・なんで泣いたんだ?」
哀にその事を聞くのは正直辛かった。
しかしその事を聞いて、自分が分かってあげて、彼女の苦しみを取り除いてあげたい・・・という一心でコナンは聞いたのだ。
病室に一瞬、沈黙が走る。
病室には時計の音だけが響いている。
すると哀が口を開いた。
「私が泣いたわけ・・・それは・・・」
「それはね・・・工藤君・・・それは・・・」
哀が泣き出してしまいそうだったので、コナンは哀の手をぎゅっと握った。
すると哀の表情が少し楽になったように思えた。
そして哀は話し出した。
「それはね・・・工藤君・・・あなたが彼女、蘭さんに想いを伝えられないのは・・・私のせいだからよ・・・。
工藤君はあなたが好きなんだって私が言ったら、彼女、こう言ったわ・・・。私(蘭)と工藤君だったら年が違いすぎるって・・・そして、その年の差を作る薬・・・そう、体を幼児化する薬・・・APTX4869を作ったのはこの私・・・その事を考えると急に辛くなって・・・それで泣いたのよ・・・だから言ったでしょ?泣いたのは思い出し泣きだって・・・その事を思って泣いたのよ・・・」
哀はそう言い切った。
するとコナンが哀に言い聞かせるようにこう言った。
「オメー言ってたよな?毒なんて作ってるつもり無かったって・・・だからオメーは全然悪くねーんだよ・・・悪いのは奴ら・・・オメーを利用し、辛い思いをさせてる奴らだよ・・・だからオメーは全然悪くねー、だから気にすんな・・・」
「あら、ありがと・・・優しいのね・・・」
哀はにっこりコナンに笑って見せた。
そしてこう言った。
「あなたがそう言ってくれたから、少し気が楽になったわ・・・」
哀のその言葉にコナンはもう1つの苦しみから少し解放されたような気がした。そんな気がする中で、こんな決意をしていた。
一灰原は・・・その重みを完全に消し去ることは・・・自分ではできねーんだろうな・・・それを・・・オレが・・・消しさってやろう・・・灰原を苦しみから守ってやろう・・・灰原の心の重みが完全に消えるまで一
第十七章 幸せの場所
「ただいまー」
「あら、お帰りコナン君!よかったー、私も今帰ってきた所なの。私がいなきゃ、コナン君まともなご飯食べれないもんね!」
蘭はそう笑いながら言った。
そして続けてこう言った。
「それで、コナン君?哀ちゃん喜んでた?」
コナンはその蘭の問いに素直に答えた。
「うん!とっても喜んでたよ!言葉には出さなかったけど。アイツけっこう恥ずかしがり屋なんだよ!でもボク、アイツの表情見てたけどすっごく嬉しそうだったよ!」
コナンのこの言葉に蘭はすごく喜んでいた。
「ホント!?うれしーな!哀ちゃんに喜んでもらえて!」
「うん!そだね!」
コナンは嬉しそうな蘭の表情を見て、いっしょに笑っていた。
それから数日間、哀はあの時のコナンと同じく上気道感染を起こした。
それも約一週間で直り、哀は退院する事になった。
そして、いよいよ哀の退院する日。
病院の玄関にはコナンや、蘭、博士。
それに歩美、元太、光彦が立っていた。
「灰原、退院できて良かったな!」
そのコナンの言葉に続いて、蘭達がこう言う。
「哀ちゃん退院おめでとう!」
「哀君退院おめでとう!退院できて良かったのぉ」
「哀ちゃん退院おめでとう!」
「灰原退院おめでとう!」
「灰原さん退院おめでとうございます!」
みんな哀の退院を心から喜んで、祝福してくれた。
哀はこれまで生きてきて、一番幸せと言うくらいの幸せを味わった。
一できればいつまでもこの幸せの場所にいつづけたい一
一この人達の側にいつづけたい一
哀は心の中で密かな思いを抱いた。
END
あとがき
こんにちは、灰原哀です。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
今回はコナン君、哀ちゃん、蘭さんの気持ちについて書いてみました。
どうでしたでしょうか?
未熟な文章ですみません。
最後に本当にありがとうございました。
灰原哀
.
|