好 き だ か ら

 

 

「ねえ、今日キッドが宝石を盗みにくるって、知ってる?」
「ああ、しってるよ・・・・。」
 今、コナンは哀の部屋にいる。
 哀がもっている本を、読みにきたのである。
 哀はパソコンにむかいながら話している。
コナンは本を読んでいるため、少しめんどくさそうに哀の話を聞いている。
「あなたも行くんでしょ?キッドが現れる場所に・・・・。」
「行くけど・・・・警察がいっぱいで・・・・はいれるかわかんねーな・・。」
「そうね・・・・。じゃあ、これは知ってるかしら?」
「?」
「今日、キッドが現れる場所に・・・ジンとウォッカも行くってことは・・・・知ってた?」
「なにっ!?」
 コナンは本を下に落としてしまったが、それにも気づかず、すごいけんまくで哀にまくしたてる。
「どこで聞いたんだ?なんでお前が知ってるんだよ!」
 それにも動じず、哀は冷ややかに答える。
「さあ・・・・・?何でかしらね?」
「ま・・・・まさかおまえ・・・・・・。」
 コナンには、嫌なものが頭によぎった。
 哀は、コナンのそんな思いをみすかしたように、「ふふ・・・」と笑った。
 その瞬間。

 ダンッ!!!!!!

 コナンは哀を床に押し倒した。
 しっかりと哀の両腕を押さえ、哀にかぶさった。
「てめえ・・・・・!」
 哀は、それでも笑っている。
 でもその笑いがすこし悲しそうな笑いだったことに、コナンは気づくはずもなかった。

「あらあら。名探偵ともあろう人が、女の子を押し倒すなんて・・・・。」
 こんなときでも哀は、憎まれ口をたたいてしまう。
 こんな自分はいやなのだか・・・・、性格はそう簡単には変えられない。
「なんだと!?」
 コナンは完全に怒ってしまった。片方のこぶしを上げて、哀に振り下ろそうとしたとき、同時に哀の片手も自由になった。

 パシッ・・・・・

 哀の手がコナンの頬をぶった。
 コナンは、我にかえり、怒って哀を殴ろうとしたこと、押し倒してしまったことを反省した。
「ご、ごめん・・・・。灰原・・・・。」
 コナンは自分の体を哀の上からよけた。
 哀は、無言で逃げるようにその場から去った。
(ごめん・・・ごめんな、灰原・・・。)
 しかし、コナンはやっぱりなぜ哀が知ってるのか、本当にやつらは来るのか、不思議だった。

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 夜・・・・・。
 哀はベランダで考えごとをしていた。
(キッドの予告は9時よね・・・・。いまは8時55分・・・。5分前だわ。
 それにしても、普通に言えば良かったのに、なんであんな言い方してしまったんだろう?
 工藤君があんなに怒るとは思わなくって・・・。)
 そんなことを考えてると、真っ暗な空から、真っ白な怪盗が降りてきた。
「こんばんは。お嬢さん・・・。」
「あら、いいの?こんなところにいて・・・。もう5分前よ?」
「いいんですよ・・。今夜も、また獲物を盗ってきたら、あなたのもとにまた参りますよ。」
「あらそう・・・・。簡単につかまるんじゃないわよ?」
「はい・・・。では、いってきます。」
 キッドが飛び立とうとしたその時。
「待って!!!!!」
 哀が叫んだ。
「なんですか?」
「あたしも、つれてって。お願い。」
「ええ、いいですが・・・・。なぜ?あのコナンとかいうのがいるからですか?」
「・・・・。」
「まあいいです。では・・・・・。」
 哀はキッドに抱かれて、ハンググライダ―で家を飛び立った。

 

「降ろすのはここでよろしいですか?」
 キッドが、警察に見つからないように哀を降ろす。
「ありがとう。」
 キッドは笑って、「では。仕事が終わったらまたお会いしましょう。」といって、走っていってしまった。
 コナンは、いがいと近くにいて、警察をすりぬけながらキッドを探していた。
 コナンが哀に気づいて、哀がコナンに近づこうとした時、哀の後ろから大きな手がのびてきて哀の口をふさぎ、そのまま連れ去ってしまった。
「灰原ァ!!!!!」
 コナンはすごい声で叫び、哀をすぐに追いかけた。
 キッドも、仕事のことなどすっかり忘れて、哀のあとを追った。

 

 哀をさらったのは、黒ずくめの男たち、つまりジンとウォッカだった。
 どこかの小部屋に哀を閉じ込め、行ってしまった。
「あたしが子供になったこと・・・・ばれてしまったのかしら?」
 哀が不安にかられていたとき、「灰原!!!」と、どこからか声がした。
「く、工藤君?」
 聞こえてきたのは、どうやら探偵バッチからだった。
「灰原・・・・。今、いくからな。」
 哀にはわけがわからなかったが、一応哀がいるところはわかっているらしい。
 どうやってコナンが哀のところまできてるかというと、キッドと一緒にハンググライダ―で飛んでいる。
 キッドに抱かれた状態で・・・・・。
 どうしてこうなったかというと・・・・・。

『おい坊ず・・・・・。ここは哀が心配だ・・・乗せてってやろうか?』
 本当はコナンが最もといっていいほど頼みたくない相手なのだが、そんなことは言っていられなかった。

 で、こういう状態で飛んでいる。
 ジンとウォッカはどこかに行ってしまった。助けるなら今のうち・・・・・。
 キッドとコナンは急いで哀を助けに行った。
 哀は、少し涙目になっていたので、キッドもコナンも驚いたが、1番びっくりしたのは哀だろう。
 本当は宿敵であるはずのキッドとコナンが、一緒に自分を助けに来たのだから・・・・。

 哀の家にキッドに送りとどけてもらい、哀は本当に安心した。
「ごめんな・・・・。灰原。ほんとに・・・・・。」
「いいえ・・。あたしこそ・・・。ごめんなさいね。組織に戻ったわけではないのよ・・・・。」
「ああ、わかってる・・・・。」
 二人はお互いに分かり合った。
 とっても安心して、コナンのことが本当に好きだと哀は思った。
 コナンも、泣き顔だった哀を見て、守ってやりたいと思った。
 二人とも、両思いなんだけれど、それに気づくのは、もう少し先のこと。

 キッドは二人のラブラブ(?)なシーンを、かげから少し悔しそうに見ていた。

 そして、どうやらジンたちが哀を狙ったのは、人違いだったらしい。

 

−余談−

 コナンは、キッドがなぜ哀のことを心配して一緒に助けにいったのか、哀を助けるのに夢中で忘れていた。でもしばらくして・・・・
「おい、そういえば何でキッドが一緒におまえのこと助けたんだろうな?」
とコナンが言ったが・・・・・。
哀は「さあね・・・。」と言いながら笑っただけだった。

 

 

                                  END

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