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* 写楽保介は二重人格か *
 幼児のように無邪気でやることなすことトンチンカンな中学生、写楽保介。しかしひとたび額のバンソウコが剥がれて第三の目があらわになると、超人的な知能とパワーを発揮して人類をも脅かす悪魔の申し子となる彼は、果たして二重人格者なのだろうか。そうだとするならば、本当の彼はどちらなのだろうか。

 私の持つ知識の限りでは、二重人格とはつまり多重人格のことで、解離性人格障害の一種。生まれ持った基本人格と、普段長く表に出ている主人格が、何かの拍子で交互に現れることである。二つの人格は対照的で、一方の人格が現れている時の記憶はもう一方の人格には無いのが通例だが、少し調べてみたところ、二次的人格が本来の人格の記憶を何かしらの意識として持つことはあるらしい。

 これらに当て嵌めてみると、三つ目写楽が生まれ持った人格で、バンソウコを貼られた状態つまり二次的人格状態である写楽が、主人格となるだろう。「三つ目写楽=基本人格」、「バンソウコ写楽=主人格」……確かに二つの性格は対照的であるし、二次的人格であるバンソウコ写楽に関しては、確かに、三つ目時の記憶がおぼろげながらもどこかにあるようなので、当て嵌まると言えるだろう。ここまではいい。
 しかし、基本人格に当たる三つ目写楽は、どうもバンソウコ写楽の記憶をはっきり持っているらしいのだ。いじめられたバンソウコ写楽が、三つ目写楽になってから仕返しすることからもそれは判る。バンソウコ写楽も、自分の三つ目時の行動こそよく覚えていないが、自分が三つ目になった時の能力の高さは認識しているようで、ピンチの時には自らバンソウコを剥がそうとしたりする。それが、バンソウコ写楽が三つ目写楽の存在をしっかり認めていると言えるレベルかどうかは判らないが、三つ目写楽がバンソウコ写楽の記憶をはっきり持っている時点で、写楽保介が二重人格であるということは概ね否定されるのではないかと思う。

 やはり、三つ目であろうとバンソウコであろうと、写楽は写楽なのだと私は思っている。第三の目を塞がれることで、知力・体力・超能力のすべてを抑制されるので、まるで別人のように見えてしまうだけなのだ、と。
 つまり、基本的には三つ目写楽の性格が本当の彼なのだとは思うが、だからといってバンソウコ写楽が別の人格かというとそうではなく、単に三つ目写楽がパワーダウンした状態だと思うんである。性格が反転するのではなくて、抑圧されているのだ。知力も下がってしまうので、自分の行動もおぼろげになってしまうのだろう。

 性格も口調も目付きも仕種も違う、一見別人のような二人だが、二人をまったく同一人物だと思って見てみると案外面白い。漫画での『怪鳥モア』や『スマッシュでさよなら』で和登サンを恋しがる姿なんか、何とも言えない想いがする。母の愛に対する渇望にしたって、三つ目写楽だろうがバンソウコ写楽だろうが同じなのだと思うと、切ないことこの上ない。

 モアといえば余談だが、モア編のバンソウコ写楽は、やたら三つ目写楽と同じような表情を見せるし、三つ目写楽は三つ目写楽でモアを殺されて大泣きするし、二人の境界線が薄く感じるので私は大好きだ。写楽が浮気しているのはコノヤローだが。



 結論。
 写楽保介は二重人格ではない……方が、私としては好ましい(爆)

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