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夢見心地
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Twinkle, twinkle, little star, How I wonder what you are.... 「When the blazing sun is gone, when he nothing shines upon.... Then you show your little light, twinkle, twinkle, all the night...」 歌が途切れて、少年は夜空に手を伸ばした。 小さな身体。華奢な腕。月明かりに照らされた、その髪は星色。 きらきら光る、星の色。 「...Heaven...send my heart.... Please...」 何だろう。見れば見るほどに引き込まれる。 月明かり。星明かり。 夜の闇。その祈り。 「Twinkle, twinkle, little star, how I wonder what you are...」 聞き慣れた調べ。 異国の言葉。 あれは……。 「誰だ……」 「Who me?」 親指を胸に当てる仕草で、少年はこちらを振り向いた。 光と影の陰影で、顔立ちはあまりよく見えない。 ただ、照し出された仄白い肌が、果敢無げに輝いている。 ラピス・ラズリの眸が、何かに気付いたようにまばたいた。 「あ……ボクのコト、デスカ?」 「……声に出すつもりはなかった。邪魔をして悪かったな」 「いいヨ。ひとりでタイクツしてましタ。だから、歌ってたダケ」 一人。こんな夜に? だが、それを言うならオレだって同じか。 詮索など、無粋な真似はしない。 一人で居る人間はいつも、何か理由があって一人で居る。 そうでなければ、何の理由もなく一人で居る。 そのどちらかなのだから。 「退屈……か。そうは見えなかったがな」 「Why?ドウシテ、そんなコト言いますカ?」 「祈りのようだった」 「……?」 「……。"Heaven send my heart, please"」 思いがけない言葉を聞いて恥じたのか、少年の白い頬にぱっと赤みがさした。 神様、どうか僕の思いを届けて。 歌の合い間に、少年が呟いた言葉。 「聞いてたノ……?Unbelievable!」 「貴様が勝手に歌っていたんだろ」 それでも少年は納得のいかない目で睨んでいる。 仕方なくオレは、話を逸らした。 「……さっきの歌、きらきら星か。歌詞が、何だか違うようだったが」 「Yeh」 と、短く答える。 その唇が、寂しそうに震えた。 「星の……ヒカリみたいナノ。色んな人を照らすヒカリ……でも」 「………………」 「ボクは、判らないネ」 いまいち、話が飲み込めない。 「ダカラ、気持ちが伝わるといい。ボクの気持ちが……」 「誰のことを話している」 「ボクの大切な、人」 そう言って、少年は少しはにかんだ。 そしてさも嬉しそうに、 「その人は、輝いてるネ。彼女のヒカリに皆が導かれてる……そんな人だカラ、ボクもその人のコト、好き」 「……そうか。結構なことだな」 「だけど、それダケじゃ……だめネ」 不意に、沈んだ声。 潤んだ瞳。 「遠くから照らしてくれるダケじゃ、だめネ……傍に、居てくれなきゃ……。Please...」 掠れた言葉の最後。 でも、オレの耳には届いていた。 「母親、か……オレにはよく判らんな。肉親であろうがなんであろうが、他人なんてものは、疎ましいだけだ」 「??ウトマシ?」 「だが」 星に願いだと? 笑わせる。 「おい、祈りは届くと思うか?」 「届く思いマス。だって、ホシがきれいだから」 でもその笑顔は、そんなオレの皮肉な笑みなど吹き飛ばしてしまうかのように光った。 それは、星のように輝く人から生まれた、小さく確かな輝き。 想いを届ける力を秘めた、輝き。 そう、今更、星になど祈らなくとも。 「まぁ、月に祈るよりはマシか」 どこの誰かも判らない異国の少年と、オレは並んで空を見ていた。 きらきら光る 小さな星よ あなたはなんて不思議なの ぎらぎら燃える 陽が落ちて 何も照らさなくなると あなたの光が見えてくる 夜通しきらきら 輝いて きらきら光る 小さな星よ あなたはなんて不思議なの Jane Taylor "The Star" |