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 夏の匂い。

 うだるような暑さと、蝉の声。

 陽炎はゆらゆらと地面を舐め、オレの感覚を狂わせる。

 どこかで、風鈴の音。

 思えばあいつと出逢ったのも、夏の日だった。

 赤いランドセル。

 あいつは、いつも皆の少し後ろを歩いて。

 知らぬ間に居なくなってしまうんじゃないかと不安に駆られ、何度も後ろを振り返り、その度目が合った。

 今でも、振り返ればそこに、あいつが居るような気がする。

 或いは居て欲しいと願う、ただの願望か。

 空っぽの病室。

 弾痕。

 ありがとう、と言ったあいつの唇。

 死んでしまえば良かった、と泣いた。

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