人間は寂しがり屋だ。
だから一人ぼっちじゃ歩けない。
でも、それはきっと―――――、
一緒に歩ける人が一人でもいれば…
“何処までも歩ける”と言うことだと思う……。
終わらない鎮魂歌を歌おう
―――――――――――――――――
オ ワ ラ ナ
イ ウ タ
ヲ ウ タ オ ウ
『カツーン…』
少女の履いていた靴が落ちる音が聞こえた。
……だが、その体は下にある硬く、冷たいコンクリートには落ちてはいなかった。
「これは――――、どういうことだ?」
「どうって―――、見たまんまだろう?まさに―――、間一髪ってやつだ」
510号はそのまま微笑しながら話しを続けた。
「妹思いのいい姉なんだがな…、あまりにも近すぎて…逆にみえなくなったわけだ」
俺は汗を一筋たらして言った。
「な、なあ…もしかして………初めからこうなるって知ってたのか?」
510号は視線を姉妹に向けたまま言った。
「そうだよ」
「おいおい、『そうだよ』って……」
「まさか……、俺がド素人のお前に本当に仕事をさせるとでも思ったわけ?」
「じゃあ、試験はどうする気だ?」
510号は口調を妖し気に変え、言った。
「お前―――、自殺を止めに入ろうとしたよな?」
その時、俺はあの言葉を聞いた。
『自殺を止めに入ったら即失格』
「た、確かにそうだけど………、結局俺は―――…またなにもしてねぇじゃねーか……」
「“灰原 哀”ってやつ覚えてるか?」
「なっ―――――?」
「実は俺が彼女を担当したんだよ。そいつも今さっきのやつと同じでな……、いじめのせいで精神的に追い詰められたんだよ」
「…なあ……、灰原の魂は…救われたのか?」
「救ったのは、俺じゃないけどな…」
「…………へ?」
「………見るに耐えない葬式だったんだが…、大声で泣き出す奴等がいたんだ。…それをみて、そいつ…なんて言ったと思う?」
『私……馬鹿…よね…、あんなに泣いてくれる人達がいたのに…………………………もう…大丈夫よ、私は大丈夫!』
「今回の試験で俺が見たかったのは、お前が変わっていないかどうか。あの時、もし1歩も踏み出していなかったら…お前は不合格だったんだぞ?」
俺はかなり戸惑いながら言った。
「…え、それってつまり…?」
「でも、これだけは憶えておけよ?」
“死神の仕事は魂を救うこと”
だから…命を軽んじるような奴には務まらない。
…でもな、俺達は人の死を嫌でも見ていかなければならない…って、お前はいつも見てたっけ?
だが…それはとても辛い事だと思う。
だが、救われない魂はそれ以上に辛いだろう。
だから、俺達はこれからも歌って行くのだ。
…終わらない鎮魂歌を。
「次からは、さっきの奴みたいにはいかねえぞ?それでも…一緒に歌ってみるか?」
…………オワラナイウタを…………
―後書き―
やっと終わらない鎮魂歌を歌おうが終わりました。
…やっぱこれ、いきなり見たら、
「コナンシリーズ終わるじゃん!」
って言われるんでしょうか…
とりあえず、終わったので、これからは第3の被験者に専念したいと思います(あ、後宿題も)。では
―灰原藍より―
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