第3の被験者
.
「ブラッド………それが俺のコードネームだ!」
…さきほどまで無邪気な笑顔を見せていた哀羽が、コナンと灰原に冷たい、そして妖しげな表情をみせ不適に笑い、叫んだ。
「……相当驚いているようだな…………。シェリー、組織がお前らのことに気づいていないとでも思っていたのか?」
「…ええ、全くそんな素振りを見せなかったものね…。してやられたわ、………研究者兼暗殺隊の……ブラッドさん?」
灰原が先ほどまでの蒼白な顔を打ち消し、さらに冷たい表情をする…が、微妙に震えている。
「……ふん…そろそろお喋りは終わりだ…」
哀羽はそう言ってコナンと灰原に銃口を向ける。
「冥土の土産…と言っちゃあなんだが…さっきの少年探偵団とか言うやつらや、西の高校生名探偵、服部平次…、阿笠博士も明日には俺の部下が消しに向かう…」
「なんだと!?」
コナンが叫ぶ。
「悪いな…、ジンからの命令なんだ…。「例え元同僚だったとしても…容赦はするな。たとえ相手が子供であろうとも…、あいつらに関わったやつらはすべて消せ」ってな」
哀羽はそう言いながら、握る銃の引き金に少しずつ力を入れる。
コナン達は、「殺られる!」と思ったのか、瞼を硬く閉じている。
「………アバヨ」
パシュッパシュッ
2発…銃声が聞こえた。
………………………………
だが、一向に激痛が襲ってこない。
瞼を開封し、辺りを見渡すが、弾痕らしき後も無い。
「…空砲…!?」
コナン達がふと顔を上げると、先ほどまでの冷たい表情が消え、悪戯気に笑っている哀羽の姿が目に入った。
「全く……そうだと思ったわ…、何故貴方の身体が縮んでるの?」
灰原は浅く溜息をつき、問いかける。
「組織が…、新しい薬を開発した。APTX4869の新化版…だそうだ」
哀羽は、また冷たい表情になる。…だが、なにかが違う。
…何処となく…哀しい、今にも泣き叫びそうな…表情だった。
「服用させる前に、何時の時代まで縮めるかをプログラミングすることで、好きな頃まで縮められる。……もちろん、胎児にも…………」
「それとどう関係が?」
灰原が、「多分理由はわかってると思うけどね…」といわんばかりの顔で問う。
「…実験台にされた。…分かってるだろう?あの組織がどんな処か。あるのは「利用」、「裏切り」ただそれだけ…」
「ええ。……で、何でわざわざ米花町まで来たわけ?」
「……これを渡しに来た」
哀羽はそう言ってMOを取り出した。パッケージシールには、「APTX4869解毒剤データ」と書かれていた。
「お前っ…どうして!?」
コナンが驚きと戸惑い、喜びを混ぜ合わせた顔で哀羽に近寄る。
「彼…、一応最高幹部なのよ…」
「そう、だからそんなデータ盗るなんて簡単なわけ…さ」
数秒ほど間を起き、哀羽が言った。
「こいつを使ってお前らは元の姿にもどれ」
コナンは、最初この言葉の意味が掴めなかった。
やがて、驚きのタガを外し、唇を開く。
「?…どうしてだよ、お前は…元にもどらねえのか?」
「戻りたくても…俺が飲んだ薬はお前らとは違う。……解毒剤さえもない…。さあ、使え…」
哀羽が灰原達に解毒剤を差し出した。だが、
「……私は…元に戻らない」
といって灰原が哀羽の掌に乗っていた薬を弾く。
「お前までなに言ってんだよ!?折角もとの姿に戻れるチャンス…「私が元に戻っても行く当てがないもの…」
灰原がコナンの言葉を遮り、うっすらと涙を浮かべながら呟く。
「……………………いるじゃないか、そこに」
哀羽が哀しいながらも優しげに微笑んだ。
…その先には阿笠博士がいた。
「哀羽くんから話しは全て聞いたよ…。なあに、心配せんでもええ哀くん。元の姿に戻っても、わしの家に居れば良い」
博士が優しそうに微笑む。
「…じゃあ、そろそろ帰宅な。急がないとあの子らにどやされる」
哀羽はそう言って姿を消した。
「あら、ほんと…じゃあ私も急ぐわね・・」
灰原も姿を消した。
だが、初めコナンはなにがなんだか訳がわからず、約束の時間5分前になってそのことに気づき大慌てし、4分遅れで米花公園に到着した。
*続く*
―後書き―
こんにちは。「第3の被験者」続編です。
前回投稿したのですが、誤字などが多数あり、
それを削除してもらうよう依頼しました。
…みなみさん、色々とお手数かけてしまい、
すみませんでした。
これを続編として出してください。
ではこれからもよろしくお願いします。
―灰原藍―
|