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      ……愚かな私。

         どうしてひとりで居られなかったの?

                                                 遥か遠くの、デジャ・ヴュ。

バ カ ミ タ イ

                     愛して欲しいの?愛されたいの?

   『だけど、誰だって、そうなんだよ』

                                        もう疵付かずに済むのなら。

       被害者意識。

自虐。

「産まれてこなければ良かったのに」










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 差し込む朝陽で、眼が覚めた。

「……!」

 自分が誰かの腕の中に居る事に、一瞬途惑う。
 思えば、目覚めた時ひとりじゃなかったのは、初めてかもしれない。
 私はもう一度眼を閉じて、彼が私の外側に居る事を確認した。

……起きてんのか」
「っ、それはこっちのセリフよ……びっくりするじゃない」

 私は彼の腕からすり抜け、シャツを羽織って窓辺に立った。カーテンを開けると、陽射しが部屋いっぱいに広がる。空は青空。こんな日は、きっと、部屋に篭ってるべきではないのだわ。

「ねぇ、聞いてもいい?」
「何だ」
「死体は、見つかった?」

 彼が、黙り込む。

「……その様子じゃ、まだみたいね」
「知ってたのか」
「そりゃあね。あたしにだって情報源はあるもの。人付き合いは嫌いだけど、馬鹿ではないわ」

 私が数週間、研究を放ったらかしにしても、何も言ってこなかった理由。私は、それをとっくに知っていた。
 まだ研究途中の薬を、無断で(というか、私より立場が上の彼らには、私の許可なんてものは必要ないのだけど)人間に殺害目的で投与し、結果その人物の死体は見つからなかったのだ。大方、この数週間、必死になって捜しまわっていたのだろう。

「言っておくけど、あの薬は確かに不完全よ。でも、人間の身体を消滅させる事なんて、有り得ない」
「そりゃあそうだ……じゃあ、なぜ死体が出てこないと思う?」
「考えられるとすれば……誰かが持ち去ったとか、ね」
「死んでねぇって可能性もあるぜ」

 内心、ドキッとする。何故?彼のこんな、根拠の無い言葉に動揺するなんて。

「どうした?」
「あの薬は……毒薬なんかじゃないのよ。判ってるの?」
「判ってるさ。しかし現段階じゃあ、APTX4869は立派な毒薬だ。認められねぇか?」
「認められないわね、この研究に携わっている科学者として」
「ひとりの小せぇ人間として、じゃねーのか」
「なんですって?」

 頬が熱いような、変な感じ。彼が笑う。ああ、厭な顔。何もかも、見透かしてるみたいな。図星だろう、と言いたげな、顔。
 本当は、望んでる。投与された人間が、死んでいない事。
 ドクヤク。違う、毒薬なんかじゃ、そんなんじゃない。
 人を殺す薬。おかしい。何かおかしい。こんな筈じゃ、なかった?
 甘いのか。私が。でも。だって。私、私は。ヒトゴロシ……?

「言ったでしょう、あたしは……」

 弱くなんか無いのよ、と言おうとして、止めた。