私が望むもの

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     誰かが求めるもの

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     私は………

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ザットウ

 

 

人ごみは好きじゃない。
姉ともあまり会えなくなって、数年が過ぎた。
“コードネーム”
私に与えられると聞いたモノの名称。それは喜ぶべき事らしい。
別に組織に恩など感じていなかった。両親を亡くした私達を救ってくれたとしても。
私は、ただ漠然と組織に対してある種の感情を抱いていたと思う。
絡み付くような、厭なイメージ。
でも、私にはどうする事もできない。私は組織のハグルマのひとつだから。
合わせて、回っているしかない。
「お前は必要な人間だ」
そう言われた時から、私の居場所はココなのだろう。
今更、何か不満の言葉が浮かぶわけでもないし。




中学に上がる前の春休み、私は久し振りに街へ出掛けた。
買い物をするわけでもなく、ブラブラ歩くだけ。
 ショウウインドウをボーッと眺めたり。
「ウン……ウン……今?デパートの近く――……」
私の傍で、ひとりの女性が立ち止まった。ケータイを耳にあてている。
「え?ヤダ。嫌よ、アンタが来なよぉ――……てゆーかさ、今日は会えないっつったじゃん……ん、そう……え?」
迷惑そうに言う彼女の顔に、ふいに光が差した。
「……何言ってんの、ガキかよ……!寂しいって?ん〜〜、マジ?どーしよっかな、アハハ……」
喋りながら、彼女は歩き出して雑踏へ消えていった。

 

 

 

『寂しいって?』
彼女の一言が、厭に耳について離れない。
電話の相手の寂しさは、彼女を喜ばせる。意味のあるサビシサ。
『寂しい?』
かもね。
でも違う。違うの、私のは。
だって、この気持ちに意味なんて無い。
無意味な寂しさ。
価値の無い感情。
私が、泣いたって笑ったって喜んだってかなしんだって寂しがったって喚いたって生きたって死んだって。
何も誰も私も、変わったりしない少しも。
だから要らない。
だって誰だって、風を凌げない壁とか雨を避けられない屋根とか、要らないでしょ。

意味の無いものなんて、そんなもの、要らないのよ私は。

だから何時も願っていたんだ。

無意味なもの全て、この世から消えてしまえば良いって。

そうしたら、私も一緒に消えるもの。

人の流れの中でひとり、私は置いてけぼりだった。

 

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