三 つ の 願 い

「(あ〜やっぱ腹減ったなぁ・・・何か持ってくればよかったぜ)」

今二人は町の通りを映画館に向かって歩いている、もちろん腕を組んで・・・しかし、歩いていて哀がふとコナンの顔を見たとき少し元気がないことに気づく

「・・・ねぇ、どうしてそんな顔してるの?」

「え!?そんな顔って・・・オレはいつもと変かわんねぇぜ」

そう、コナンは用意の確認を完璧にするあまり、朝御飯を抜いてきていたのだ

「嘘、なんだか元気がないわよ?」

「(ス、スルドイ・・・)」

コナンはポーカーフェイスを保っていたが、内心『流石だな』と少し動揺していた

「そうか?別に何ともねぇけど?・・・あ、そういやさぁ」

「ちょっと、誤魔化さないでくれる?・・・どうなのよ、何か理由があるんでしょ?」

コナンは話を変えようとしたが、哀はそれを許さない

「・・・ホントになんでもねぇって、だから気にすんな」

しかし『気にするな』を言い換えれば『何かあるのだが黙認してくれ』だという事、哀は瞬時に頭で推理を展開してこれを悟る

「・・・私のせい?・・・」

哀は組んでいた腕を放し、俯いて立ち止まる

「ハァ?何がだよ」

立ち止まったのを不思議に思い、コナンも少し遅れて止まる

「そうよね、私のせいよね・・・せっかくの休みだって言うのに無理やり工藤君を引っ張って来たんだし・・・嫌だったら帰ってもいいわよ、一人で行くから・・・」


また哀は憎まれ口を言ってしまう

「・・・」

コナンは無言で哀の手を少しキツめに握り、人通りの少ない脇道に入って行く





「ちょっと、どこへ行くのよ」

「・・・」

しかしコナンはその問いに答えず、ただ哀の手を握って少し早足で歩く

「こっちは映画館方向じゃないわよ・・・」

「(この辺まで来たら人に聞かれる心配はねぇな・・・)」

数分歩いて完全に人気が無くなった、ここでやっとコナンは手を放し、そして少し呆れた様な口調で哀に言った

「なぁ、なんでそんな事言うんだよ・・・」

「なんでって・・・さっきのこと?・・・それ以外考えられなかったし、無理やり引っ張ってきたのは本当の事だし・・・」

「・・・逆だろ、誘ったのはオレの方だったじゃねぇか・・・」

「だったらなぜなの?そんな浮かない顔して・・・」

「メシだよ、メシ、哀とデートに行くのが楽しみでメシ食うのを忘れた、それだけだ・・・まぁ、哀に妙な心配させないでやろうと思って黙ってたオレもわりぃんだけどよ」

「え!?・・・そ、そうだったの・・・って、もう10時じゃない、かなり空腹なんじゃないの?」

「んなことはどうでもいいんだよ・・・それより、もうこれから自分のせいなんて言うんじゃねぇぞ、オレは哀が傍にいてくれるだけで十分幸せなんだからよ・・・」

「・・・分かったわ・・・ゴメンなさいね、また悪いほうに考えてしまって・・・もう憎まれ口なんて言わないから、帰るなんて言わないで・・・」

「言うわけねぇだろ?・・・今日一日、ちゃんと付き合ってくれよな」

コナンは哀に軽くウインクする、それは瞬く間に哀の心を魅了した

「///分かったわよ、ちゃんと付き合ってあげるわよ・・・だから早く映画館に行きましょう」

「ああ、そうだな・・・さっきはゴメンな、手つかんで無理やりこんなとこまでつれて来ちまって・・・」

「別にいいわよ(無理やりっていうのは言い過ぎよね・・・)・・・でもまぁその代わりといっちゃなんだけど、朝食ちゃんと食べてもらうから・・・」

「わぁったよ・・・じゃあ行こうぜ」

「ええ」

コナンは哀の手を取って来た道を戻り始めた、互いの手が触れ合った瞬間、先程とは違いお互いの頬がほんのり赤くなる、すぐれた頭脳を持っている両名だが恋愛に関してはまだまだ二人とも初心者同然である





二人はとりえず元の道に出たが、映画館までは5分もあれば着くのでまだ余裕がある


「・・・ねぇ、ここにしない?」

「ハァ?ここオープンカフェじゃねぇか、こんなとこで何すんだよ」

「あら、さっき言ったじゃない、あなたの朝食よ」

「そんなのいいって、それよりオメーどっか行きたいとこあんだろ?だったら先に行っちまおうぜ」

「ダメよ、朝食はちゃんと食べないと・・・食べないって言うのならさっきの事、許してあげないわよ?クスッ」

少し意地悪くからかう哀、コナンは多少呆れながらも気にかけてくれている事を実感して嬉しくなり、付いて行くことにした

「いらっしゃいませ・・・あら?坊やたちだけ?」

「うん、そうだよ」

コナンは小学生を演じている

「そう、じゃあこっちへどうぞ」

「ハ〜イ」

「クスクス、相変わらず子供の振りが上手いわね」

「ハハハ・・・オメーもちょっとは見習えよ・・・」

そんな会話をしつつ二人は向かい合わせに座った

「んで?何を食えばいいんだ?」

「そうね・・・そのメニュー、取ってくれないかしら」

「はいよ」

「ありがと・・・」

「哀もほしいものがあったら、何でも頼めよ?お金のほうは心配いらねぇからよ」

「あら、優しいのね?ならお言葉に甘えさせて貰おうかしら・・・あ、ところで工藤君はコーヒーのアイスとホット、どっちが好き?」

「どっちでも飲むけど・・・まぁ今は歩いて来てちょっと暑いから・・・アイスかな?」

「甘い物は大丈夫よね?」

「ああ、全然OKだぜ」

「そう・・・」

哀はメニューを開いて暫く考えていたが、一瞬意味ありげな笑みを零し、店員を呼んで注文を言い始める

「何にするの?お嬢ちゃん」

「え〜と・・・アイスコーヒー二つと、ラブリーミックス一つと、チョコレートケーキを二つ・・・以上です」

「へ〜、二人ともコーヒー飲めるの?偉いわね〜」

「(ハハハ・・・そういやオレ今ガキだったんだ)」

哀とのデートという事でコナンは完全に高校生気分になっていたらしい、何も知らない店員さんがそういう反応をするのは至極当然だった

「分かりました、少々お待ち下さい」

「おいおい、別に無理して買うことなかったんだぞ、それに『ラブリーミックス』ってなんなんだよ」

コナンが店員の姿が見なくなったのを確認してから哀に小声で耳打ちする

「クスッ・・・それは来てからのお楽しみよ」

「お楽しみ?・・・どうせすぐ来るんだし、まぁいいか」






それから暫くして、頼んだものが運ばれてきた、そしてコナンは『ラブリーミックス』の意外な正体に顔を真っ赤にした

「///お、おいマジかよ、こんなの飲むのか?」

「///何よ・・・欲しいものがあれば頼んでもいいって言ったんだから別にいいでしょ?」

一つの大きなグラスから二つのストローが出て、それらが見事にハート型に折り曲げられている、どこからどう見てもテレビなどでカップルがよく飲んでいるタイプの飲み物だ

「///は、恥ずかし過ぎるぜ、こんなの絶対飲めねぇよ、それに今はお互い見かけは小学生なんだし・・・」

「やっぱり・・・嫌なのね?」

「え!?」

「私と同じ飲み物を飲むのが嫌なのね?・・・」

哀は両手で目より下を覆い、目にいっぱいの涙をためながら今にも泣き出しそうな声でそう呟いた

「あ・・・いや、ち、違うんだ、とにかく落ち着いてくれ」

コナンはかなり焦っている、今哀が泣き出せば、周りからのコナンへの目はかなり悪くなるのは必至

「じゃあ、これ・・・一緒に飲んでくれる?」

少しでも動けば零れてしまいそうな目で、上目使いにコナンの目を見つめながら聞いてくる哀、この目で頼み事をされると、もうコナンに選択の余地はない

「分かった、分かったから泣くのだけは止めてくれ、今泣かれたらマジでヤベェんだ!哀、頼むから泣かないでくれ」

あたふたしながら、最後には両手を合わせてまで哀に頼んでいる、すると哀は何事もなかったかの様に、たまっていた涙を払う

「クスクス・・・約束したから、もう飲まないなんて言わせないわよ」

その変わり様にコナンは一瞬ポカンとしていたが、数秒後

「(や、やられた・・・)」

「工藤君、涙は女の武器だって事、ちゃんと覚えておくのね・・・クスッ」

コナンは呆れた顔で空を眺めた、しかしすぐに哀からの命令が下ったので、同時にジュースを飲むことになった

「///せーの・・・(///あ〜もう恥ずかし過ぎるぜ!)」

「///せーの・・・(///さすがに少し恥ずかしいかしら・・・でも楽しいわね・・・)」

お互いに目線を泳がせながら落ち着かない様子で飲んでいた、二人とも一日にこんなに恥ずかしいことがあったのは初めてで、顔がのぼせて風邪でも引いてしまいそうだった、もっとも、残りの時間のほうが長いのだが・・・

「・・・ふぅ///これでいいんだろ?」

「ジュースはね・・・次はケーキよ///ハイ、口開けて」

哀はすでに一口サイズにケーキを割り、フォークに刺して持ち上げている

「(///おいおい、勘弁してくれよ)」

哀は今日の自分は以前の自分とどこか違うと思い始めていたが、大好きな人とこんなことができるのだから、別に周りからなんと言われようが、構わないと思っていた、しかしコナンにとってはたまったものではない、『デート』というだけでも、緊張しているのに、こんなに恥ずかしいことを連続してやらされては、身が持たない

「///わりぃ、ちょっとトイレ・・・」

「逃げたって無駄よ?工藤君・・・」

コナンは明らかに逃げるように走っていった、しかし数分後、哀が癖になって二人分のケーキをすべて哀に食べさせられているコナンの姿があった、食事を終えた二人は時間の関係もあり、急いで喫茶店を出て映画館へ向かった










10:25、チケットを見せて映画館に入り、二人はかなり後方の席に座る

「ったく・・・今日オメーどっかおかしいんじゃねぇのか?」

「そう?私にしてみれば今までがおかしかったのよ・・・感情を押し殺すような、組織にいた頃のままの性格がね・・・」

「あっ・・・ゴメン・・・」

コナンは哀の雰囲気に気づいたのか、とっさに謝った

「いいの・・・気にしないで、今は違うんだから・・・」

「哀・・・」

そんな雰囲気のまま映画が始まる、タイトルは『四つの署名』そう、あのシャーロックホームズの代表的な作品の一つだ、いかにもコナンが選びそうである、哀もこの頃コナンの影響で推理小説を読むようになり、この話を一度読んだことがあった、故に『映画になるとどんな風になるのか』・・・という考えがあったので、悪い気はしなかった、だが・・・

「それにしても、初デートで見る映画がこれとはね・・・」

哀が言うのも当然である、普通初デートで見る映画にこの映画を選ぶ人は探してもそういない

「いいじゃねぇか、オメーもこの頃推理小説にハマってんだから悪い気はしねぇだろ?オレ、結構この話気に入ってんだよな〜、まさかあの署名を見ただけであそこまで分かっちまうなんてよ・・・オレには出来ねぇ芸当だぜ、それに後半の追走劇も読んでてマジでハラハラしたし、捕まえるまで絶対に諦めねぇホームズの探偵としての誇りってのを感じたぜ・・・全く、ホームズは探偵の鏡だな」

「(クスッ・・・相変わらずね)まぁいいわ、さっき喫茶店で私の無理、聞いてくれたしね・・・(それにこういう所も工藤君の魅力の一つだから・・・)」

「そんなことねぇよ・・・確かに死ぬほど恥ずかしかったけど、心のどっかではスッゲー嬉しかったんだぜ」

「工藤君・・・」

もはや二人には他人も映画も関係のない世界へ入っていた、哀は自分の頭をコナンの肩に乗せ、コナンの腕に自分の腕を巻きつける

「暫く・・・こうしていていい?」

「ああ・・・まぁ哀の本来の性格がこんな感じだって大体分かってたし・・・」

「・・・それ、どういう意味よ?」

「クールな性格の哀も魅力的だったけどよ・・・やっぱり素直で優しい性格の哀も好きだな・・・」

「あら、それって二度目の告白?」

「///そうだと思うんなら、そういう事にしてやってもいいぜ」

「ありがと・・・十分嬉しいわよ、工藤君・・・」

「こんなんで喜んで貰えるのなら、一日100回でも1000回でも言ってやるよ・・・」

コナンは哀のウェーブヘアーで赤みがかった茶髪を優しく撫で始める、すると哀は5分と経たないうちにカワイイ寝息を立て始めた

「(こいつ、ほんっとにカワイイよなぁ・・・こんなにカワイイやつがオレの彼女になってくれたのか・・・)」

おそらく誰が見ても幸せな雰囲気に見えるだろう

「おやすみ、哀・・・(おやすみのキス・・・だな)」

コナンは哀が寝ているのをいいことに、ほっぺたに一瞬だけキスした、そのあとコナンは、自分のしたことがどんなに恥ずかしい事かに気づき、顔を赤らめた

「(///さすがにちょっと度が過ぎたか・・・///あ〜くそ、こんなに恥ずかしい思いするんだったらしないほうが良かったぜ・・・)」

コナンは恥ずかしくて頭を掻きながら、ありもしない周りの視線を気にして暫く無理やり目を瞑っていたが、知らない間に本当に寝てしまっていた










11:30、映画は1時間半なのであと30分、ここで哀が目を覚ます

「・・・うぅん・・・あ、私寝てしまったの?・・・って、工藤君も寝てるじゃない・・・」

コナンは自分の肩に乗っている哀の頭に寄りかかるようにして寝ていたので、哀が頭を起こすと、今度は哀の肩に寄りかかってきた

「全く・・・両方寝たら映画の意味がないじゃない・・・」

少し呆れた表情でつぶやく哀、しかしすぐに優しい表情になり、哀の心が和んだ

「こうして寝顔だけ見てると、名探偵さんもホントの小学生みたいにカワイイわね・・・クスクス」

哀は今の状態が少しでも長く続くように願っていた、そして暫くすると

「・・・哀・・・」

コナンが急に寝言を言い出す、映画はクライマックス手前の追走劇に差し掛かって音量が大きくなった事に加え、多少他人と距離を置いているので当然哀以外には聞こえない

「・・・私の夢、見てるの?」

「・・・お前が・・・ほしい・・・」

「///な・・・なんて寝言言ってるのよ」

「・・・スー・・・スー・・・」

コナンはまた静かな寝息を立て始めた、しかしそろそろ起こさないと映画が終わって次の客が入ってきてしまう

「(そろそろ起こさないと・・・でも起こす前に・・・)クスッ・・・分かったわ、ご希望通り私の唇をあげるわよ・・・」

哀はコナンがしたように一瞬だけほっぺたにキスをした、哀がキスをし終えるとコナンは図った様にすぐに目を覚ました

「・・・ん?・・・ふぁぁ〜・・・オレ寝ちまったのか・・・」

「(!?・・・どうやら目覚めのキスになったようね・・・起こす手間が省けたわ・・・)///おはよう工藤君・・・・随分と過激な寝言だったわね」

「え!?寝言なんて言ってたのか?どんな寝言だったんだ?」

「『お前がほしい』・・・ですって、全くどんな夢を見てたんだか・・・私を襲ってる夢でも見たのかしら?」

「///そ、そんなわけねぇだろ!・・・今の哀とは、そういうこと抜きで純粋に付き合いたいんだ(まぁ、『今の』だけどよ・・・)」

「・・・でも寝る前にそういうことをするか、考えるかしなければ、そんな夢を見ることはないと思うけど?」

「そ、それは・・・」

「ほら、やっぱり・・・何かそういうことをしたのか、考えてたのかどっちかなんでしょ?さぁ、白状しなさい」

「・・・分かった、負けたよ、全部話す・・・実は哀が寝た後に・・・その・・・」


「・・・何かいやらしい事をしたとか?」

「ち、違う、そんなことはしてねぇ!ただ・・・///ちょっとほっぺたにキスを・・・」

「え!?・・・そうだったの・・・でもそれなら許してあげるわ、私も工藤君が寝てる間に同じ事したから」

「えぇ〜!?ど、どこに?どこにしたんだ?」

「ちょっと、ここ映画館よ?大声出さないでくれる」

「あ・・・わぁったよ、で?どこなんだよ」

「工藤君と同じ場所よ・・・さすがに寝ている人とはファーストキスしたくないしね(そう、あなたとはちゃんと向き合って・・・)」

「(お前の言いたいことは分かってる・・・)なんだ、オレと同じ事考えて・・・って哀もまだ一度もしたことないのか?」

「え!?・・・まさか工藤君も?私はてっきり、例の彼女とした事があると思ってたのに・・・」

「バーローしてねぇよ(まぁ人工呼吸崩れっぽいことはした様な気がしないでもないけど・・・あれはキスって言えるレベルのもんじゃねぇしな)、おめぇのほうこそ組織にいた頃、一度や二度は・・・あっ・・・す、すまねぇ・・・」

「フッ・・・まぁそう思われても仕方がないかもね・・・あの組織にいた人間だものね・・・」

哀が言い終わるとすぐにコナンが哀の体を抱きしめた

「ゴメン・・・ホントにゴメン・・・でも・・・全然そんなつもりなかったんだ・・・」

「・・・何言ってるのよ、そんなこと分かってるわ・・・私も別にそういう意味で言ったんじゃないから気にしないで・・・それに私はもう抜けたんだし・・・」

「ああ・・・でも今オレが言ったことは許されることじゃねぇ・・・しかも今日三度目だ、これは不注意以外の何でもねぇ、こうしねぇと自分で納得できねぇんだ・・・だから今は黙ってオレの謝罪の言葉を聞いていてくれねぇか?」

「いいのよ、そんなに思いつめなくても・・・じゃあ私も謝るわ・・・工藤君はちゃんと蘭さんに別れを告げてきたって言ってくれたのに私もついあんな事聞いちゃって・・・だから両方謝って相子、これでどう?」

「哀・・・」

コナンは抱きしめていた手を緩めて少し離れて哀の目を見つめる、そして改めて哀の優しさに触れていた

「・・・ほら、いつまでもそんな驚いたような顔をしてちゃダメよ・・・どんな時でもポーカーフェイスを保つのは名探偵の基本なんでしょ?」

「ああ、分かってる・・・」

照れることなくお互いに見つめ合った、スクリーンに反射して映し出される相手の顔、暗闇、周囲に人が居ない・・・かなりいい雰囲気である、しかしここで丁度映画が終わって照明がついてしまった、おそらくあと10分、いや5分あれば二人はここで俗に言うファーストキスをしていただろう、しかしついてしまったものは仕方がない

「あっ・・・終わっちまったな・・・出るか?」

「ええ・・・」

二人は映画館を後にする、その後再び行き先について話し合い、次はコナンの行きたがっていた洋服店に行くことになった

「ゴメンなさいね・・・」

「ハァ?なにがだよ」

洋服屋に行く道中で、ふと哀が呟いた

「せっかく映画のチケット用意してくれたのに眠って無駄にしてしまって・・・あんなの滅多にやってないから高かったんじゃ・・・」

「何言ってんだよ、オレは十分満足してるぜ、スッゲーレアなプレゼント貰ったからよ」

「クスクス・・・そうね、私もいいもの貰ったし・・・」

「そういうこと!だから『無駄だった』なんて思ってないぜ?」

「ありがと・・・」

「気にすんなよ・・・それより、カワイイ洋服、期待してるぜ!」

「(・・・自分が行きたがっていたのに自分の服を買うつもりはないのね・・・)あら、小学生の着る服に期待するなんて、名探偵さんもとんだロリコンだったのね」

「///バーロー、実年齢はオメーのほうが一つ上だろ?・・・それに、たとえ小学生の姿でも、哀が着れば・・・」

「クスッ・・・分かったわ、それなりに期待しておいて・・・でも次に年齢の話し出したら、またウソ泣きしてなにか買わせるわよ」

「げ!?それだけは勘弁してくれ・・・」

「ほら着いたわよ、入りましょ」

「ああ・・・哀に似合う服、見つかるといいよな・・・つーかどれ着たって似合うけどよ」

「///もう、バカな事言ってないで行くわよ!」

「わぁったよ(ったく、反応がカワイイぜ・・・)」

そんなやりとりをしながら二人は一軒の洋服店に入って行った、二人の顔には自然と笑みがこぼれていた、こんな二人を邪魔することは、世界広しと言えど誰一人としてできるものはいないだろう、そして組織にいた頃の自分を封印した哀と、日本警察の救世主であり、蘭の思いの人であった自分を封印したコナン、この二人は『過去』を胸の奥に留めつつ『今』というと時を精一杯生きている、その胸にほんのりと暖かい何かを抱いて・・・

★感想はスカーレット様まで★

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